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Research 林 Jeremy Loop Roots
林 靖典 ポートレート 林 靖典 | ヨォルング語研究者・イダキ奏者

オーストラリア在住ヨォルング語研究者 林靖典の「アーネム・ランド単身赴任」

3. Walu Gorrmur’「暑いっ!」

■150個のチョコレート

4月10日。今日はハッピーフライデーなので、朝から義兄と、卵型のチョコレート150個ほどをコミュニティーの子供達に配った。150個も多いんちゃうん?と思ったけど、あっという間に無くなって、来年は倍を用意するらしい。チョコレートに殺到する子供達、幸せいっぱいの顔でめちゃくちゃかわいい。

中にはあれ?この子にさっきあげたような、なかったようなっていう子にあげたが、家に帰ってカメラをみると1回目にあげた時に撮った写真にしっかり写ってた…昼過ぎからは居候先の家族とビルマとかウメラ(槍を投げるときに引っかける道具)を作るときに使う特別な木を切りにブッシュへ。

■雨期のブッシュへ

雨期あけのミリンギンビ
スピア・グラス、蟻塚の中を突き進む。

雨季の終わりなので、スピア・グラスというまさしく、槍のようにピンピンに先がとがっている2m以上の草が生い茂っていて、道なき道を4WDでガツガツ入って行き、木を見つけては自分の背丈よりも成長している草を掻き分けてブッシュの中に入った。

蛇おるんちゃうかなと思ったので、念のため姉に聞くと、

「そうよ、蛇いるから気をつけてね」

と。Detollの消毒液よりも鉄板入りのワークブーツを持ってくるべきだった。

義兄を手伝わない訳にも行かないので、おそるおそるビーチサンダルで入っていると、後ろから姪っ子が側転をしながらスピア・グラスを掻き分けて素足で転がってく…「写真撮ってよ♪」と言われるが、そんな余裕がないので無視。結局蛇は現れず、いい感じの木が4本くらい見つかり、斧で切り落とした。

帰り道にはラクダ(蛤のような貝)とマッドクラブを採るために、マングローブの奥地へ。マングローブに入るんやったら、トレッキングサンダル持って来てたのに先に言ってよと思ったが、時既に遅く、マングローブの入口ですんなりビーチサンダルの鼻緒が抜け、素足で奥地まで歩く破目に。夕方だった事もあって、歩くのも一苦労だけど、サンドフライの痒みに耐えるのもキツイ。

10ヶ月の甥っ子も一緒に行っていたので、途中から僕が甥っ子を抱えてマングローブを歩く事になったが、足滑らして落っことしてしまったら一大事だし、痒いし、足裏がかなり痛いので、すぐに義兄にバトンタッチ。そうこうしているうちに僕の歩くスピードが遅すぎて、だんだん家族と距離が離れていく。それを見かねたのは義兄でも姉でもなく、姪っ子で、すたすたと平地を歩くように近づいてきて「こっちだよ、早く早く」と言って、木の杖を差し出してきた。頼りなくて本当にすいません。

結局みんなサンドフライにやられてしまい、1個だけラクダを発見し帰宅。しっかりと身のつまったラクダて七輪の上で醤油と酒かけて焼いたらめちゃくちゃ美味しそう。

みんな泥だらけなので、海で体を洗って帰るが、海水にアレルギーのある僕はまたまたキツイ。

自然に完敗です。もっと皮膚の強い子に生まれたかったと心から思った。

ラーコーダ:蛤に似た貝
ラーゴーダと呼ばれる蛤みたいな貝。

■ヨォルング社会のルール

少し眠った後、フィールドワークの為にコミュニティーを徘徊。本当に少しずつだけどプロジェクトが前に進んでいることが嬉しい。ヨォルングの気持ちを汲み、ヨォルング社会のルールに従って進めることは本当に時間がかかるし、思い通りにいかない事もたくさんある。それらを無視してプロジェクトを進めて、結果を作る事はできるかもしれないけど、それでは単なる学校の中の蛙になってしまう。

プロジェクトに関わって頂いているヨォルングが皆口をそろえて助言してくれるのは「まっすぐな道(ヨォルング社会のルール)を歩いていれば、プロジェクトで問題は起きないし、絶対に成功するよ」と。やっぱり毎日コミュニティー内を歩き続けるしか道はなさそうだ。

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